エッセイ 明石タコのタコ釣り

タコと言えば、足が8本あって鉢巻きをしているひょうきんな姿を思い浮かべる。「タコ」と言われると、よろしくないバカにした言葉になる場合が多いのだが、マダコに代表されるタコは、知能も高く、とても美味な食べ物で、趣味の釣りでは、誠に面白い対象魚のひとつになる。

釣られて頭をかいても遅い

釣られて頭をかいても遅い

食べものとしておいしいことから、常に需要が供給を上回っている。国産だけでは不足で、近年モロッコやセネガル産が急増したが、あちらも乱獲だそうだ。そんな中ブランド力を高めてきたのが、兵庫県明石沖で獲れる「明石タコ」。明石海峡の急潮で豊富な甲殻類や二枚貝を食べて育ったタコである。うまみ成分が凝縮した感じで、確かにうまいし、値段もそれなりの高級なタコである。芋蛸南京と女性の好きなものとも言われ、おいしい素材だ。冷凍保存もでも大きく味も劣化しない重宝なものであり、夏の間は冷凍庫やチルト室に在庫していて、無くなると釣りに行っている。気温も下がる秋は、冬の煮物用をストックするようなもので、私のタコ釣りは、いわば我が家の食糧確保である。

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初夏から秋までが釣りシーズンとなり、釣り船がたくさん出て、休日はどの船も満員の人気が続く。「明石タコ」が釣れると言うことで釣り人は集まるが、食べておいしいのと同じくらい、釣って面白い。知能が高い無脊椎動物とのだまし合いが実に面白く、これが人気の秘密となっている。

知能は学術的にも高いとされていて、その学習能力もなかなかのものらしい。タコの前で、水槽の中に鍵をかけた箱やねじ蓋の瓶にエサを入れると、半眼でジッと見ながら覚え、鍵を外し、ねじ蓋を開け、中のエサを獲る動画を見た。そんなタコとの釣りだから面白くないはずがない。

タコは、とにかく頭が良い

タコは、とにかく頭が良い

知能が高く、好奇心旺盛で、食いしん坊。そして、個々に縄張りを持っていて、エサの豊富な場所に集まる。このタコの寄り場で釣らすのが釣り船の船長の腕前だ。

最近は「タコエギ」という疑似餌で釣るが、タコの縄張りへ仕掛けが行くと、侵入者と間違え追い払おうとしたところ、疑似餌を見つけ、食いしん坊はそれを食べようとして釣られてしまう流れである。知能が高いのは間違いないが、それ以上に食いしん坊で好奇心が強いので、釣られてしまうのだと思う。この一連が誠にゲーム性豊かで面白く、一度釣るとおいしさとおもしろさで病み付きになる。これが、タコゲームだ。

そして、釣り上げたタコを手づかみで取り押さえ、保管用の網に入れるのは、クライマックスだ。あのヌルっとした手触りと、力強い8本の足の抵抗力に加え、吸盤の吸い付きに墨、乗合船での家族連れは、それはにぎやかで楽しい光景になる。そして、油断をすると歩いて逃げる。まさに歩いてい逃げる。タコにすれば、生死をかけてのことだろうが、頭にねじり鉢巻きで逃げ回るように見え、実にひょうきんな姿である。そして、船の海に通じる排水口を目指すのだが、なぜわかるのだろうか。逃げられたのは、一度や二度でないから網袋に入れるのは絶対だ。

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頭が良く、吸盤の足で地上を3次元行動で目標に向かって行くのは、恐れ入るばかりだ。他の釣りにはこんなキャラクターは存在しない。愛すべき明石タコである。

何といっても美味い。特に、この明石タコは旨味の凝縮で、噛んでいくとその味わいは誠に深い。定番は、茹で上げた刺身をわさび醤油で食べるのだが、単純なこの食べ方がうまい。天ぷら、煮つけ、唐揚げ、ソテー、酢の物、タコ飯に干し物。ご飯のおかずとしても、酒の肴としても一級のうまさであることは間違いない。問題があるとすれば、食べ過ぎに飲み過ぎというところだ。特にタコ飯は、旨味が米粒に行き渡るようで、途方もなく食べれてしまう。

明石タコだい!風呂に入ってきた

明石タコだい!風呂に入ってきた

7月2日頃に「半夏生」と呼ばれる雑節がある。農家にとっては大事な節目で、この日までに田植えを完了させる目安だそうな。全国各地で様々な習慣が残っているそうである。この明石界隈播磨地方では、タコを食べる習慣がある。タウリンたっぷりの栄養豊かなものを食し、厳しい夏に備えるという土用丑の日の鰻みたいだ。旬のものを食べるのは良いことで、半夏生は、夏タコシーズンが始まる頃だ。今年も、半夏生にタコを釣り、夏の栄養補給をした。

漁師さんの干しだこ

漁師さんの干しだこ

何度釣っても興味は薄れない。さらに、おいしいとくれば、タコ釣りの人気の高さが頷ける。

今釣れている旬の魚の実釣記録です。狙った潮で釣った胸のすく釣り、まぐれで嬉しい釣り、実力の貧果まで、来年の今日のための実釣記録です。99.9%ひとり気ままに午前中だけの釣りですが、おいしい魚の釣りものを参考にどうぞ。
meikeimaru の失敗から生まれた推論と実戦のノウハウ集です。ボート釣りでの仕掛けやタックル、釣り方など、実釣記録に基づく活きた内容として、情報提供をします。播磨灘で培った私のノウハウですが、参考にしてください。
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