エッセー ボート各部の名称 | ヘルム、ラット、ヘッド、おもしろ名称

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ボートの構成各部の名称に ヘルム、ラット、ヘッド等々一般的には理解ができない呼び方名称があります。

何のことかわからないもので、これを一般的な呼び方にしますと、運転席、ハンドル、トイレになります。まだまだ、これら以外にもこのボートやヨットという分野で使われるものがたくさんありますが、語源が何語なのか不明なものもあります。

普通に一般的な呼び方をすればよいのに、わざわざ違う言い方をするのでしょうか。歴史から見て、自動車よりも勿論飛行機よりも、古くから存在する乗り物ですから、こちらの方が原点で、時代とともに一般的な呼び方が変化したのでしょう。

それでも、一種独特で奇妙でありながら、潮味たっぷりな独特な用語の一部をご紹介します。ボートでの写真は、一般的な小型フィッシングボートです。

 ヘルムステーション

運転席、操縦席、操舵席です。それは、船の場合は、コックピットではありません(後述)。ステアリングホイールがあって、前進後進のギアレバーにスロットルレバー、それに各種エンジン関連のメーター類がありますので、ボートの場合は、車と似通っている部分がたくさんあります。一番違うのは、GPS魚群探知機、レーダーなどの計器が車のナビとは違い、はるかに大きな顔をしてデンと据えられているところでしょうか。場合によっては、小型ボートでもそれらの機器が3つも4つある場合があります。それに、無線機の存在は一般的で、これも車とは違う部分でしょう。すべての操作は、手で行い、ペダル類はありませんので足は踏ん張るだけのものです。

ヘルムステーション YFR24

ヘルムステーション YFR24

ヘルムとは、舵取りやそのための装置のことを言い、舵を操作する場所だからヘルムステーションです。違う呼び方をする場合は、コントロールステーションと言われます。

ボートを動かすための装置や電装系のスイッチなどが集約されている場所で、まさにコントロールステーションです。

ヘルムステーション FAST26

ヘルムステーション FAST26

ボートでは操(舵)縦席の2ステーションは珍しくありません。いわゆるキャビンの中のヘルムステーションのほかに、ルーフ上のフライブリッジにあるコントロールステーションや、釣りをしながらボートをコントロールする船尾側に簡易操縦席のアフトステーションがあって、同じ操作ができます。車のルーフ上や後部にも運転席があるようなものですね。

 ラット

ハンドルのことであり、現代ではこのネズミみたいな呼び方も薄れてきて、ステアリングホイールと呼ぶ方がはるかに多いですが、未だにこの呼び方は残っています。日本語で言うと舵輪です。

ラット ステンレス製

ラット ステンレス製

船の舵輪の典型スタイル

船の舵輪の典型スタイル

形状は様々で、車のステアリングホイールと同じようなものから、材質をステンレス製にしたもの、絵になるようなとげとげをはやしたものまであります。その、とげとげをはやしたものは、キャプテンハンドルと言う場合もあり、様々です。

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その大きさも、直径で車と同じようなものや、それより小さいものから、ヨットでは直径が1mを超えるものまでありますが、ボートでは車と同様のものが一般的です。
このラットの語源がわからないようです。何語なのかはっきりした見解が無いそうですが、ハンドルはラットです。

 ヘッド

正式にはヘッド・コンパートメントで、単にヘッドと呼ばれ、トイレです。

ヘッド YFR27

ヘッド YFR27

キャビン奥のカディ部分に便器を取り付けた簡易タイプから、個室のトイレまで様々ですが、大型艇になるとこの個室がシャワールームにもなっていて、いわゆるバスルームそのものです。中で大人が立てるくらいの広さが必要とされていますが、制約の大きい小型艇ではなかなかそんなことできません。meikeimaru も個室はありますが、立てるどころか方向転換もままならないので、あらかじめ後ろ向きに入ります。

ヘッド meikeimaru

ヘッド meikeimaru

さて、なぜトイレがヘッドと呼ばれるのかというと、帆船時代に話がさかのぼり、船首の先は縦にも横にも三角形になっていて、船室にも倉庫にも使いにくい場所です。さらには、帆船の場合は風を受けて進んでいますので、船首をトイレにして海へ廃棄するに追い風ですから好都合です。そんなことから、船首の先端のヘッド(頭)にトイレは設置され、その場所が名称のヘッドとなったそうです。まあ、場所の有効活用からできたと言えます。

しかしながら、船首という場所は、船のピッチングで一番揺れるところですので、用をたす場合は、落ち着かないことと思いますし、時化の時は、波はかぶるは、揺れるはで、命がけではなかったのでしょうか。

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トイレは大事な場所で、狭くても小さくてもトイレが設置されていることは、どれほど心丈夫かと思います。狭くても小さくても水洗トイレですし、ありがたいです。

レストルームやパウダールームなどの上品な呼び方もありますし、飛行機は全世界共通でラバトリーですが、船はヘッドです。

 コックピット

メーカーのカタログを見ますと、運転席、操縦(舵)席をコックピットと表現しています。船の場合これは、あくまでもヘルムステーションであり、コントロールステーションです。操縦席をコックピットと言うのは、飛行機です。

なぜならば、コックピットの語源は、闘鶏場です。コックcock雄鶏と、ピットpit穴からなり、まさに囲まれた中の低い位置にある部分を言います。英和辞典には、闘鶏場と記載されています。不思議ですけど、これが語源です。

ですから、ボートの場合は通称リヤデッキと呼ばれている場所ですが、私もリヤデッキと表現をした方がわかりやすいので、あえて使っていますが、これは間違いです。まず、リヤという言い方は船にはなく、「アフト」が船尾側という意味になり、この場合は、アフトデッキかスターンデッキになりますが、この場所をデッキと呼ぶのも間違いです。ここは、コックピットです。写真の場所です。

コックピット FAST26

コックピットと正式にはこの場所をいう FAST26

フィッシングボートでは、ここがメインの釣りの位置になっていますが、コックピットと呼ばれる場所は、ここになります。

デッキは、船体(ハル)の上部に貼られた床を言うので、meikeimaru では写真の位置が船首デッキです。

バウデッキmeikeimaru

バウデッキmeikeimaru

コックピットと呼ばれる場所は、船体上部デッキより低い位置で周囲を囲まれた場所です。

デッキに作られた凹状の場所がコックピットということになります。造作を表現するのがコックピットですから、ボートの操縦(舵)席はヘルムステーションで、コックピットと表現するのは、どうやら違ってきます。

では、なぜ飛行機の操縦席はコックピットと言われるようになったのでしょうか。

紅の豚というアニメ映画がありましたが、主人公のポルコ・ロッソが操縦するサボイアS.21飛行艇をご存知の方も多いと思いますが、あれこそ操縦席は、穴の中です。ゼロ戦も操縦席は、同じく胴体の穴の中です。本来は無蓋だと言われていますが、操縦席の場所は、周囲を囲まれた胴体の部分です。ここから、操縦席=コックピットとなったようです。現代の飛行機でも戦闘機の場合は、このような雰囲気ですね。しかし、大きな旅客機は少々違うようですが、少なくとも、飛行機の操縦席はコックピットで表現されています。

ヨットは、下の写真のようにコックピットにヘルムステーションが設置されているケースもあります。基本的に飛行機と同じ形状です。周囲を囲まれたデッキより低い位置に、大きなラットがあります。これは、コックピットにヘルムステーションが設置されています。コックピットという場所に操縦(舵)席があります。

byPixabay まさにコックピット

これら以外にもまだまだあって書ききれないほどです。大型のボートですと、食事などの調理をするキッチンがありますが、これはギャレーと言います。また、その調理された食事をする場所もダイネットと呼ばれ、キャビンの中でくつろぐ場所はサロンでありと、テーブルと椅子の場所でも、地上とは違います。

とにかく様々に地上の呼び方とは違う海の上の呼び方をしますが、地球上を大きく移動できる乗り物としては、一番の歴史を持った乗り物ですから、このようになったのでしょう。

しかしながら、時代の移り変わりと同時に単語の持つ意味合いが変化しているのも事実です。広辞苑も更新しているのですから言葉は変化していますので、こんな船の世界の言葉も一般的ではなく、客船に乗ればトイレはトイレとなっていますし、わかりやすいようになっています。

それでも、ボートやヨットの世界に足を踏み入れると、こだわりたくなります。古く長い歴史が作り出したものでしょうから、大事にしなくてはいけないと、つくづく実感します。

今釣れている旬の魚の実釣記録です。狙った潮で釣った胸のすく釣り、まぐれで嬉しい釣り、実力の貧果まで、来年の今日のための実釣記録です。99.9%ひとり気ままに午前中だけの釣りですが、おいしい魚の釣りものを参考にどうぞ。
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