魚を釣り上げる最後は取り込みです。大型を釣ると多くの場合、ここで玉網を使いますが、玉網入れを様々なスタイルでしています。6mもの長い玉網を磯の上からスルスルと出す上物釣り、同じく長い玉網を出す防波堤の釣り。ナイスキャッチの鮎の友釣り、背筋を伸ばした姿のヘラブナ釣りや黒鯛いかだ釣り、かっこよい渓流釣り。直径が80cm以上もある大きな玉網を使うこともある船釣り。釣り人共通のものは、大物ほど網に入れた途端にホッとする気持ちと、こみ上げる嬉しさです。
しかし、船釣りだけは、最後の取り込みの玉網入れは、多くの場合は船長がします。お客さんの釣り人自身は、サオを持っているだけです。「船長お願いします。」です。釣り番組を見ているとプロの方々は皆さん「船長お願いします。」です。ハリも外してもらっています。中には、「船長!リーダー入ったでえー」というメーカープロもいます。船長も商売ですから奮闘です。
船釣りは、あるお客が船を貸し切りで釣るのが原型でしたから、船釣りだけは船長が玉網入れをするサービスがあるのでしょうね。でも、玉網に最後取り込むのは結構難しく、ベテラン船長とて失敗があって取り逃がすこともあるでしょう。大概は釣り人が魚をきちんと誘導していないからなんですが、これまた、たいへんなことです。
ボートアングラーは、最後まで自分でやれよと思ってしまうこともあります。メーターオーバー8kg超のブリが来ても、自身でタモ入れ。これがボートのキャプテンアングラーです。
内海の播磨灘で、ブリを玉網に入れた瞬間は、雄叫びとガッツポーズです。
ひとり気ままなボート釣りで一番きついのは、他船も多く混雑しているポイントで大物をかけてからの取り込みです。青物シーズンの休日は、たいへんな混み合いで、安全確保は船長にとって緊張する場面です。良いポイントには船が集まりますので、他船の引き波と潮の流れで、いつも以上に大きく船が揺れます。私の24feet艇なんて、周囲の船の引き波で翻弄されます。両手はサオに玉網、場合によっては操船、揺れてもつかまることができずで、両足で踏ん張っていないとひっくり返りそうになります。
ひとりワンオペです。サオと玉網と操船、確かにきついですが、これがひとり気ままなボート釣りの面白さで、うまくいったときの充実感がたまりません。釣っている最中や玉網に入れたところの写真を見るとハマチサイズまでしかありません。ブリのパワーだと、さすがに釣り途中では撮れていなく、必死の形相なのでしょうね。
魚がたくさん釣りたければ、長い経験を培ったベテラン船長の釣り船に乗ればよく、これは間違いありません。釣れる場所に船長が連れてってくれますので、釣りに集中すればよいです。その釣り船の船長はたいへんでしょうね。魚の食欲は潮の流れや動きによって食い気が変わります。食わないときは食いません。それでも、お客さんに釣ってもらわないといけないのですから、釣り船の船長はご苦労が多いことと思います。釣れない理由の最大は本人の腕の問題ですが、自分の腕前が釣れない結果だったと考えるのは、たいがい最後です。
シマノの番組で、唐津市呼子港のサンライズという釣り船の船長が登場します。釣り船の船長ですから、お客様に「船長お願いします。」と言われているのでしょうが、キャプテンアングラーとして、自分の釣りを楽しみにひとりで出かけられます。その映像では、玄界灘で20kgオーバーのヒラマサをキャスティングゲームで釣り、玉網入れまでワンオペです。ひとりで、潮波の立つエリアで50feet以上の船を操り、あの大きさのヒラマサを渾身の力で制することをひとりでできる技量は、並大抵ではないものだと感服します。
でも、ひとりって気楽です。釣れなければのんびりしていればいいし、朝一番にブリ2本釣れば、さっさと朝からドヤ顔で8時に帰港です。たまに強烈に数釣りをしたくなる時がありますが、普段は今日明日食べる分があれば十分です。青物ならば2-3匹のハマチで大満足です。アジやキスはもう少し数が欲しい。タコは、重さで3㎏あれば上等です。
その他も数匹レベルがあれば、私は満足な釣りです。良く釣果を聞かれますが、こんな話をしても釣れない言い訳にしか聞こえていないでしょうね。最高の喜びは、狙ったポイントと潮で釣れば、素人キャプテンアングラー冥利です。海に出れることが楽しく、この気楽さが、私の楽しいひとりのボート釣りです。
I steer alone,catch alone and finish alone.