meikeimaruの食いしん坊 肴は「いかなご」
いかなごの釘煮を作る
イカナゴとは、スズキ目ワニギス亜目イカナゴ科の魚類で、日本全国に分布しているそうですが、基本的に北方系の魚で、低水温を好むとされています。播磨灘の鹿ノ瀬という微粒子の砂の瀬があって、ここがこの地方のイカナゴの生息地の原点です。しかし、違法な砂の採取で大きく鹿ノ瀬はダメージを近年受けたことがあります。回復はしていません。水温の上がる夏は、この砂に潜り暑さを避けて夏眠をします。
このイカナゴ漁が毎年3月に解禁され、短期間の漁期が始まります。2019年は、3月5日に解禁になりましたが、不漁になった大阪湾エリアは、わずか3日で終了しました。播磨灘側は22日まで続くというような情報です。
この時期のイカナゴは、5cm前後の大きさで始まり、終盤には6-7cmの大きさになってきます。新子と呼ばれ5㎝くらいの小さいものが釘煮には珍重され、大きくなる後半は値が下がる傾向があります。
そして、このイカナゴを使った郷土料理である「いかなごのくぎ煮」は、神戸西部から播磨地方の春の家庭料理で欠かせないものです。
「くぎ煮」は、珍味メーカーの登録商標ですので、ここでは釘煮となります。生活の中では、くぎ煮ですね。
この時期になると、スーパーにはイカナゴコーナーができ、いかなごの釘煮を作るための醤油やみりん、砂糖に水あめや生姜、保存するためのタッパ等々が陳列されます。販売において、生のイカナゴと同時に、この釘煮を作るための材料も大きな商材で、この時期この地域の経済活動のイカナゴの役目は小さくありません。
まあ、奥さんたちが芸能人の追っかけをしているようにして、水揚げをされたイカナゴを目指していて、あっちのスーパーがいくらだとか、毎年この時期に繰り広げられています。
午後各家庭の台所から、釘煮を作る良い香りが流れてくるのは地元の当たり前でしたが、最近は少なくなったような気がします。家庭ごとに味付けも違うために、もらったりあげたりと交換しての地元の良きイベントです。
早朝からの網で、昼一番には地域のスーパーや市場の店頭に並びます。それを目指して、買いに行き、1kg単位で売られていますが、キロなんぼの価格で一喜一憂です。
以前は、キロ数百円レベルでしたが、年々価格は高騰して、昨年は2000円でした。そして、今年は3000円レベルで我が家も目を吊り上げながら、買ってきていました。
この5cmほどの大きさのイカナゴの生を冷凍保存して、釣りのエサに使います。特に根魚やアナゴには、効果が大きく抜群なんですが、キロ3000円の高値に、エサ用の分け前が小皿分確保するのがやっとの激減で、今年は高騰です。
いかなごの釘煮は、保存が効き冷蔵庫で正月までおいしく食べれます。そして、このおいしさは、お茶請けからごはんにお弁当、そして酒の肴にとカバー範囲がとてつもなく広いのが特徴で、それだけに男女ともに年齢や趣向をまったく問わずに「おいしい」と言う言葉が出ます。
家庭で3-5㎏のイカナゴを購入して、釘煮を作るなどはごく普通のことで、これをまた遠くの知人に宅急便で送るというのも年中行事です。しかし、ここへ来て不漁が続き、この価格の高騰がどうにもなりませんので、大量に作る家庭は減ったでしょうね。
不漁続きは、鹿ノ瀬の砂の被害による環境破壊もありますが、瀬戸内海の海の養分が変化をして、植物性プランクトンが減少しているのが、大きな要因だとわかってきています。
植物性プランクトンを動物性プランクトンが食べて、その動物性プランクトンをイカナゴなどの小魚や甲殻類がエサにして成長します。そして、小魚や甲殻類を食べる魚が育つという、この食物連鎖が様々な原因から崩れているようです。瀬戸内海がきれいになり過ぎということらしく、研究され、だいぶに解明されました。その改善に向けて、いろいろなことが行われていますが、いましばらくは時間が必要でしょう。
瀬戸内海を大事にしなくてはいけません。
さて、そのおいしいいかなごの釘煮はこんな感じで作ります。
買ってきた新鮮なイカナゴをさっと水洗いします。ちょうど良いサイズで、新鮮な輝きをしています。例年、肴用の釜揚げがあるのですが、まわってきません。山葵醤油でうまいんですが。
醤油にみりんにお酒を少々、ザラメに生生姜の千切り、あとは水あめもあると良い感じで、火にかけて準備をします。
その煮汁にイカナゴを入れて、強火で煮込んでいきます。これが結構な強火です。アルミホイルで落し蓋にして煮込んでいきます。煮汁が煮込みで少なくなるように煮込んでいきます。
いよいよ終盤戦です。だいたい40-50分煮込むようにしていくと、煮汁がなくなってきます。その間、煮汁が全体に行き渡り、均等に煮込むのにかき混ぜます。箸は少しだけで、鍋をもって浮かすように回転させながら混ぜていきます。箸やへらを使うと頭が取れてしまいますので、注意が必要です。
煮込み完了で、出来上がりです。ザルの上にあげて、煮汁を落とします。あとは、冷まして保存容器に小分けにすれば、楽しいおいしいものが手に入りました。
出来上がりを見ると、抜いて曲がり、それが錆びたような釘がたくさん集まったように見えます。これが釘煮の由来です。水あめを多めにすると、硬くなってきますし、生姜に山椒を加えると違う味になります。
今年2019年は、3月22日が最終のようですので、もう1-2回は買って来て、保存用の釘煮を作りたいですね。
おいしい播磨の郷土料理、いつまでも食べれるように、海を大事にするために山を大事にして、豊かな海が来てほしいです。